2016年はSIMフリースマホ2社が躍進! 2017年の動向は?

カテゴリー: 格安SIM・MVNO

2016年は格安SIM・SIMフリースマホが普及した年に

現在、日本にはNTTドコモ(docomo)・au by KDDI・SoftBankという大手携帯電話会社3社(3大キャリア)が存在しますが、近年はこれら3大キャリアから回線を借り受けて通信サービスを提供するMVNO(Mobile Virtual Network Operator 仮想移動体通信事業者)のサービスが急拡大しています。MVNOのサービスは「格安SIM」「格安スマホ」とも呼ばれていますから、広告で目にする機会も多くなりましたね。

日本におけるMVNO自体は2001年から存在していますが、いわゆる「格安SIM」としてサービスを開始したのは、スマートフォンが普及しつつあった2010年3月のことです。この頃、「b-mobile」のブランド名でサービス展開する日本通信が、docomo回線を利用したSIMとSIMフリー端末の販売を開始しました。

私・ふみびとも、2011年12月に初めて「格安SIM」を契約しました。ショッピングモールのイオンで日本通信のSIMが販売されていると知ってデータ専用SIMを契約し、インターネットオークションで購入した韓国LG製のdocomoスマートフォン・Optimus Chat L-04CにSIMを装着して使っていました。

Optimus Chat L-04C

ただ、2011年時点では格安SIMを利用するのはごく一部のマニアに留まり、一般的な層にまで普及しているとは言いがたい状態でした。

ところが、2016年は格安SIMが急速にシェアを伸ばし、3月末時点で契約回線数は前年比65.5%増の539.4万回線となっています。まだデータがありませんが、4月以降も含めればさらに契約者数が増えているでしょう。1億以上ある日本の携帯電話回線に占める割合は微々たるものですが、「マニアだけのもの」ではなくなったことは確かです。

格安SIMの契約数は539.4万回線、シェアは「楽天モバイル」が3位に - ITmedia Mobile

後述しますが、2016年は格安SIMと同時に「SIMフリースマホ」の普及が進んだ年ともなりました。

格安SIM利用者が急増した要因は?

このように、2016年に格安SIM利用者が急増した要因としては、次のような事柄を挙げることができます。

  • Androidスマートフォンの安定化
  • 総務省による「SIMロック解除」の義務化
  • 総務省による「実質0円」禁止

つまり日本の総務省が掲げた指針が最大の要因なのですが、具体的に説明する前に「Androidスマートフォンの安定化」について取り上げます。

Androidスマートフォンの安定化

世界中でスマートフォンが爆発的に普及したのは、2007年にアメリカ・Appleが発売したiPhoneがきっかけであることは間違いありませんね。iPhoneに対抗するため、2009年にはGoogleが開発したOS・Androidを搭載したスマートフォンの販売も開始されました(正確には「Googleが買収した会社が、Linuxをベースにして開発した」OSがAndroidです)。

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ただ、初期のAndroidスマートフォンは動作が非常に不安定で、iPhoneと比較すると日常的な使用に耐えうるものとは言えませんでした。私が使っていたOptimus Chat L-04Cも、動作が非常に遅く、アプリを使っている最中に突然停止するといったことが何度も起きました。

Androidスマートフォンが不安定だった原因は、ハードウェア(機械としてのスマートフォン自体)とそれを動かすソフトウェアであるAndroid OSの相性が悪かったことにあります。

まず、「Android」という名前のスマートフォンはありませんね(実は「Android One」というものがあるのですが、話が複雑になるので省略します)。SamsungのAndroidスマートフォンはGalaxyですし、SonyならばXperiaです。Googleが開発したOSを、別の会社が作ったスマートフォンに搭載するという、つぎはぎだらけの寄せ集めでした。

一方のiPhoneはハードウェアもソフトウェアもAppleが一体的に開発していますから、安定性という点ではAndroidを大きくリードしており、長期的なサポートを提供することが可能です。

2017年現在も「ハードとソフトがばらばらのAndroid」と「一体的に提供されるiPhone」という関係は変わっていませんが、2014年頃からはAndroid OSとハードウェアの双方が安定性を高めたため、iPhoneと比べても遜色ないレベルとなっています。

そして、iPhoneはiPhone 5cやiPhone SEといった低価格モデルを除けば、ほとんどが高価格帯の製品となっています。その一方で、Androidスマートフォンは各社が自由に開発できるため、中国やインドなどの企業が日本円で1万円程度の格安モデルを販売することも可能です。

Apple and Android Price Gap Widens | Fortune.com

こちらのサイトによれば、2016年第1四半期の平均価格は、iPhoneの691ドルに対してAndroidは215ドルです。どの国のデータかは明示されていませんが、日本でもほぼ同様の傾向であることが推測できます。

日本で言えば「電話とLINEくらいしか使わない」というライトユーザーは、1万円台の格安Androidスマートフォンでも不便に感じることはありません。いわゆる「ガラケー」(従来型携帯電話)の製造・販売が縮小している以上、乗り換え先は格安のAndroidスマートフォンとなります。

総務省による「SIMロック解除」の義務化

2016年に「格安SIM」が普及した第2・第3の要因は、総務省による『「SIMロック解除」の義務化』と『「実質0円」禁止』です。

日本に限らず、携帯電話・スマートフォンには「SIMロック」という制限がかけられていました。現在、スマートフォンで通信するには、電話番号が書き込まれた「SIMカード」を取り付ける必要がありますが、SIMカードを発行した会社とスマートフォンを販売した会社が一致しなければ通信できませんでした。

モバイルWi-FiルーターHW-02EとSIMカード

たとえば、docomoが販売したスマートフォンは、docomoのSIMを挿し込まなければ使えませんでした。仮にSoftBankのSIMをdocomoスマートフォンに挿したとしても、通信制限がかかるので使うことができません。

そのため、3大キャリアは自社に適合したスマートフォンの販売を主導し、「スマートフォンが売れたら、docomoなど3大キャリアが販売店に報奨金(インセンティブ)を支払う」というビジネスモデルを行うことが可能でしたが、総務省は「報奨金のせいで通信料金が高止まりしている」と問題視しました。

そこで、2015年5月以降に発売されるスマートフォンは、原則として利用者がSIMロック解除できるようにするという指針が定められたのです。

ただし、iPhoneなどごく一部の端末を除けば、SIMロック解除による恩恵はほとんどないと言えます。

なぜならば、docomoが販売した端末は基本的にdocomoの周波数にしか対応していないため、たとえauのSIMで通信できるようになっても、電波を受信しにくいためです。

そして、現在日本で使われている格安SIMはほとんどdocomo回線を利用していますが、docomoスマートフォンはSIMロック解除しなくてもdocomo系格安SIMで通信できるので、わざわざSIMロックを解除する必要がありません。

ですが、SIMロック解除の義務化がまったく無意味だというわけではありません。先ほど少し触れたように、iPhoneは各社の周波数に対応していますから、「auが販売したiPhoneを中古で買って、SIMロック解除した上でdocomo系格安SIMで使う」といったことは可能だからです。

また、「SIMロック解除」という概念が、ある程度は消費者に広まりましたし、初めから3大キャリアを介さずに販売される「SIMフリー」(正確には「SIMロックフリー」)のスマートフォンが認知されるきっかけともなりました。

総務省による「実質0円」禁止

SIMロック解除は義務化されたものの、先述のようにほとんどの消費者にはメリットがありませんでしたし、通信料金の値下げにもつながりませんでした。そこで総務省は、3大キャリア・販売店にスマートフォン本体価格の値上げを要請しました。

念の為に言うと、総務省が求めたのは「値上げ」ではなく「スマートフォンの端末購入補助(報奨金)の適正化」ですが、消費者から見れば値上げであることは間違いありません。

しかしながら、こちらの記事にもあるように、総務省の要請を受けても通信料金は下がりませんでした。「実質0円」でスマートフォンを販売する店舗は減少しましたが、「抜け道」を使って安売りを続けた店舗も一部に存在します。

よって、総務省は2017年前半にガイドラインをより厳格化する予定です。

これらの報道によると、平成29年(2017年)6月1日以降新たに発売される端末は、2年前の同型機種の下取り価格以上で販売しなければならないというガイドラインの策定が予定されています。やはり実質的な値上げですね。

このように、2016年は『「3大キャリアがスマートフォンを値上げして、通信料金も下がらないならば、格安SIM・格安スマホに移行しよう」と考える消費者が増えた』年であると言えます。

2016年に注目された「SIMフリースマホ」とは何か

以前は、格安SIMといえば、楽天モバイルやmineo、LINEモバイルといったMVNOが注目されることがほとんどでした。これらは主に通信を提供する会社ですから、ユーザーは自分が使う格安SIMが対応したスマートフォンを別途用意しなければなりません。以前は、「3大キャリア」から発売された中古スマートフォンをオークションで購入することが一般的でした。

ただ、3大キャリアで「新規契約」または「機種変更」を行うことなく、家電量販店やネットショップで購入できる「SIMフリースマートフォン」も、年々増えてきています。

SIMフリースマホとは、その名の通り3大キャリアによるSIMロックがかかっておらず、周波数さえ一致すれば格安SIMを装着するだけで通信・通話を行えるようになる機種のことです。

前述のように、日本の格安SIMはほとんどがdocomoの回線を利用していますし、docomoの機種はSIMロックの有無にかかわらずdocomo系格安SIMを使えますから、SIMロックがかかっていないこと自体はさほど重要ではありません。

では何が重要かと言えば、ユーザーが「料金プランの契約」とは無関係に「機種を購入」できるようになったことです。3大キャリアの場合は、「機種変更したら、2年間通信料金から割引します!」というように、機種の購入と料金プランが一体化していましたね。

今までは3大キャリアが料金プランと端末(スマートフォン)をセットで販売していましたが、これからは消費者自身がMVNO(格安SIM)とスマートフォンを自由に選択することができます。

3大キャリアからMVNO・格安スマホへの移行イメージ

中国・台湾企業のSIMフリースマホが日本で好調

2016年は総務省の「実質0円禁止」ガイドラインが定められて3大キャリアがスマートフォンを実質的に値上げしたため、「SIMフリースマートフォン」を製造・販売する企業が大きな注目を集めました。

特に話題となったのは、中国のHuawei(ファーウェイ 華為技術)と台湾のASUS(エイスース)の2社です。これらの企業は価格が安く性能も良い、いわゆる「コスパが良い」SIMフリースマホを日本市場に次々と投入し、日本の消費者に受け入れられました。

日本のスマートフォン市場はApple・iPhoneの「一強状態」で、それにSony・Xperiaが続いています。Apple以外の外国企業は、世界的には高い販売シェアを誇る韓国Samsungでさえ太刀打ちできない状態でした。

そんな中、Huaweiは2016年に日本市場でシェア4位に躍進したと発表しました。この販売数データからは「ドコモショップ」など3大キャリアの名前を冠する専売店が除外されており、家電量販店に限った販売台数ですが、「日本ではApple以外の海外メーカー製スマホは売れない」という常識を覆したことになります。

日本のスマホシェア4位に――2016年にHuaweiが躍進した理由 (1/3) - ITmedia Mobile

2016年1月〜11月のスマートフォン販売シェア

はっきり言って、日本の消費者にとって中国メーカーの製品は「安かろう悪かろう」という印象が強いのではないでしょうか? そのような中、Huaweiは日本のユーザーが求めるスペックと価格のバランスを実現し、質の高いサポートセンターを日本に開設するなど、顧客満足度の向上に余念がありません。

たとえば、ドイツの有名メーカー・Leica(ライカ)のレンズを搭載してカメラ性能を向上させた「P9」「Mate 9」や、その廉価版である「P9 lite」などのスマートフォンは、日本市場でも高い人気を誇ります。楽天モバイルが「Honor 8」を、UQ mobileが「P9 lite PREMIUM」をそれぞれ独占販売するなど、日本の格安SIM業者との提携にも積極的に取り組んでいます。

台湾のASUSも、格安のハイスペックスマートフォン「ZenFone」シリーズに以前から定評があり、ITリテラシーが高い日本のユーザーに愛用されています。2016年には特殊な周波数を使っているau系格安SIMにも対応したSIMフリースマートフォンを発売するなど、日本のユーザーを重視した姿勢に好感が持てますね。

「SIMフリー」は和製英語?

余談ですが、「SIMフリー」という言い方は正確には誤りです。英語の free は名詞の後に付くと「〜がない」という意味になります。たとえば「ストレスフリー」は「ストレスがない」、「バリアフリー」は「バリアがない」という意味ですね。ですから、「SIMロックがかかっていない」状態は「SIMロックフリー」と表記するのが正しいはずです。英語では「Unlocked」とも言います。

ただ、Amazon.comやeBayなど英語圏のショッピングサイトでも「SIM Free」という誤記が一般的になっています。「SIMカードを同梱せずに販売している」と解釈すれば間違いではありませんし、「SIMフリー」という言い方のほうがわかりやすいですから、このブログでも「SIMフリー」と表記します。

2017年もSIMフリースマホは好調を維持できるか?

日本のIT情報サイトには「2016年はSIMフリースマホが躍進した年になった」という記事が多く掲載されています。

では、2017年もこの傾向は続くのでしょうか? 私は「格安SIM・SIMフリースマホのユーザーは多数派とはなり得ないものの、着実に増え続ける」と見ています。

格安SIM・SIMフリースマホは通信などに関する設定をユーザー自身が行わなければならず、故障時のサポートも手厚いとは言えませんから、「3大キャリア」から格安SIM・SIMフリースマホに移行するユーザーの数は限られるでしょう。

それでも、総務省のガイドラインが正式に策定されて、2017年6月から安売り規制が強化されれば、コストパフォーマンスに敏感で機械にも詳しいユーザーが格安SIM・SIMフリースマホに移行する動きは強まるはずです。乗り換え需要が一服するまでは、通信会社であるMVNOと、SIMフリースマホを製造するHuawei・ASUSなどの電機メーカーが引き続き好調を維持するでしょう。

もっとも、総務省の思惑通りにスマートフォン本体の値上げに伴って通信料金が値下げされたり、「格安SIM」への顧客流出を恐れた3大キャリアがサービス向上に取り組んだりすれば、3大キャリアへの回帰が起きる可能性もあります。

HuaweiとASUSが躍進を続けるとも限りません。どんな大企業でもごく些細なことがきっかけで消費者の信頼を失ったり、経営が悪化したりすることはあります。

さらに、既にSIMフリースマホを日本で販売している富士通に加えて、SONYやSamsungなど他のメーカーが日本市場でSIMフリースマホの販売を開始することもあり得ますから、中台の2社も安閑としてはいられません。

いずれにせよ、格安SIM・SIMフリースマホは節約に役立つのみならず、チェックするだけでも非常に面白い分野です。2017年も通信業界の動向から目が離せません!

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