立憲民主党枝野代表の2018年7月20日不信任演説が緊急出版
立憲民主党・枝野代表による安倍内閣不信任案の趣旨弁明
2018年(平成30年)7月20日、衆議院本会議に立憲民主党などの野党5党・1会派が内閣不信任決議案を提出しました。
決議案自体は与党などの反対多数で否決されましたが、立憲民主党・枝野幸男代表の趣旨弁明が2時間43分にもわたったことが話題となりました。
【衆院本会議】内閣不信任決議「カジノや選挙制度改悪を災害対応に優先させた、その1点をもっても不信任に値する」枝野代表 - 立憲民主党
枝野代表の演説(趣旨弁明)は、あまりの長さから賛成派・反対派の両方から「長々と演説して法案の阻止を目指す、フィリバスター(議事妨害)ではないか」と指摘されました。
その一方、枝野代表は演説の中で次のような「安倍政権の7つの問題点」を取り上げました。
- 過労死を増やすことになる、国民の命を危機にさらす高度プロフェッショナル制度を強行
- カジノ法案を強行
- アベノミクスの行き詰まり、限界の露呈
- 政治と社会のモラルを崩壊させるモリカケ問題
- 誤魔化し、いい加減な国会答弁の数々、民主主義のはき違え
- 行き詰まる外交と混乱する安全保障政策
- 官僚システムの崩壊
このような指摘は、当然ながら安倍政権の支持者からは否定的に、立憲民主党支持者からは肯定的に受け止められました。
そしてなんと、2018年8月9日、枝野代表の演説が扶桑社から緊急出版されることになりました。演説が行われた7月20日からちょうど20日という異例の速さです。
タイトルは『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』という、わかりやすいものです。
「反対する野党」にこそ意義がある
大統領制の国とは違い、日本の国会は与党が多数を占めますから、最終的にはどのような法案も与党の賛成多数で可決され、不信任案・問責決議案は否決されます。
でも、「どうせ政府・与党の法案しか通らないんだから、野党は不要だ」ということにはならないでしょう。
政府・与党の方針に反対し、もう一つの選択肢を示すことが野党の役割ですから、この不信任演説には意味があると私は思います。
もちろん国民の大半が支持して選挙で投票したから今の政府・与党が存在するのですが、中には「今の政府・与党は支持できない」という国民もいます。
選挙で与党と野党が同じ政策を掲げていては選択肢がなくなりますから、野党は政府・与党の法案に反対し(もちろん「何でも反対」ではなく、野党も約8割の法案には賛成しています)、問題点を指摘するべきです。
国民はそのような与野党の振る舞いをチェックして、今の政府・与党の方針に賛成ならば与党に、反対ならば野党に選挙で投票すれば良いという、シンプルなルールです。
Amazonでベストセラーに!
「枝野演説」は発売前にもかかわらず、Amazonの「本」カテゴリーランキング1位を獲得しています!(画像は2018年7月29日16時13分に取得)
「政治」ジャンルではなく、全ての本の中で1位です。いかにAmazon利用者の関心が高いかがわかります。
たとえ支持しているとしても、約3時間の政治家の演説なんて聞く気になれませんが、活字になることでわかりやすく、読みやすくなりますね。
もちろん、この書籍を購入する人の大半は安倍政権不支持かつ立憲民主党支持であり、「なんとなく安倍政権・自民党を支持している人」がこの本を読んで考えを変えることなどないでしょう。
それでも、たとえどのような形であれ、国民が政治に興味を持つのは良いことだと思います。
なぜ扶桑社が立憲民主党の書籍を出版するのか?
気になるのは、この書籍を出版するのが扶桑社(ふそうしゃ)であるということですね。
扶桑社といえば、フジテレビ・産経新聞などで構成されるフジサンケイグループの一員であり、産経新聞は保守的・自民党寄りであることが知られています。
ただし、扶桑社はフジテレビまたは産経新聞の子会社ではなく、持株会社「フジ・メディア・ホールディングス」の100%子会社です。
扶桑社は「ハーバービジネスオンライン」というサイトを運営していますが、このサイトにはなぜか現政府・与党に批判的な記事が多く掲載されます。
ジャーナリスト・菅野完氏の「日本会議の研究」を出版したのも扶桑社ですし、元となったオンラインの連載が掲載されたのも扶桑社運営のハーバービジネスオンラインです。
詳しい事情は伺い知れませんが、扶桑社はフジサンケイグループの中でも毛色がちょっと違うのかな?という気はします。
演説の当日に書籍化決定?
扶桑社から「枝野演説」が出版される経緯について、枝野代表と菅野完氏(の事務所)がTwitterで言及しています。
https://twitter.com/officeSugano/status/1020321841305436160菅野完事務所 @officeSugano 7月20日
【事務所より】
7月20日(金)の衆院本会議での枝野議員演説の直後に思い立って動き出した、#枝野の0720内閣不信任案賛成演説を本にしよう 計画ですが、
な ん と そ の 日 の う ち に 書 籍 化 の 企 画 が 通 り ま し た ! ! !
以上!ご報告します!!!
https://twitter.com/edanoyukio0531/status/1023430049561686016枝野幸男 @edanoyukio0531 7月29日
出版する扶桑社さんから演説直後に打診があり資料提供などしましたが、弁護士ドットコムさんのご指摘とおり、著作権に基づいて許諾したり拒否したりなどの権利行使をする立場にありません。そもそも私にとっては出版自体が光栄なことで、多くの方に読んでいただけるだけでありがたいことです。
https://twitter.com/edanoyukio0531/status/1023430050912251905枝野幸男 @edanoyukio0531 7月29日
一部に誤解されている方がいるようですが、出版の主体は扶桑社さんの編集部。『私や立憲民主党が扶桑社さんを通じて出版する』のではありません。読んでいただけること自体がありがたいので、私にとっては重要ではないのですが、売り上げ部数によって私に印税が入る訳ではないようです。念のため。
https://twitter.com/edanoyukio0531/status/1023430051927228419枝野幸男 @edanoyukio0531 7月29日
「なぜ扶桑社さんか?」というと、20日のうちにきちんと企画書を示して打診がありました。上記の通り著作権を行使する立場でないにもかかわらず丁寧に意向を聞いてくれたこと、企画書では上西先生など私が信頼できると思われる方々に解説を依頼するとなっていたことなどから「喜んで」と答えました。
本当に7月20日当日に枝野代表に打診があったのか、はっきり言って、ちょっと疑わしいところではあります。
事前に扶桑社から「枝野さんの本を出したい」と言われていたのではないか……という疑問がありますね。
それはともかく、気になるのは枝野代表がTwitterで「著作権(略)の権利行使をする立場にありません」と述べていることです。
演説を書いたのは枝野代表なのに、著作権を権利行使できないとはどういうことでしょうか?
政治家の演説に著作権はない!
枝野代表の演説の著作権について、「弁護士ドットコム」というサイトが解説しています。
枝野代表「3時間演説」緊急出版、一晩でAmazon1位に 政治家発言の著作権は? - 弁護士ドットコム
このサイトによれば、政治家の発言は誰でも自由に利用できるそうです。
著作権法第40条(政治上の演説等の利用)では、「公開の場で行われた政治上の演説や陳述、裁判での公開の陳述は、ある一人の著作者のものを編集して利用する場合を除き、方法を問わず利用できる」「議会における演説等は、報道のために新聞等への掲載、放送等により利用することができる。同様の目的であれば、翻訳もできる」としている。
つまり、枝野幸男・立憲民主党代表に書籍の著作権はなく、印税は1円も入らないということですね。
もっとも、枝野代表自身も先ほどのTwitterで「読んでいただけること自体がありがたい」と述べていますから、多くの人の目に触れるのであれば、お金をもらえなくても良いという考えでしょう。
お求めはこちらから
扶桑社の書籍『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』は、既にAmazonなどのサイトで予約可能です。
もちろん、あなたが2018年8月9日以降にこのページをお読みになっているならば、すぐにお求めになることができます!
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