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となりの億万長者の資産運用・倹約術で富裕層になる方法

あなたのそばにも「となりの億万長者」がいる!

億万長者、つまりお金持ちとはどんな人たちでしょうか? やっぱり、大邸宅に住んで高級車を乗り回す、絵に描いたような富裕層なんでしょうか。なれるものならなってみたいですよね!

ただ、そんな人は地球上の1%の富を独占する「超富裕層」に属するでしょう。真似してもなれるものではありません。

一方で、富裕層の中には日本円で言えば資産1億円くらいの「億万長者」も存在します。それくらいならば、ごく普通の人でもなることは不可能ではありません。

そのような手の届く範囲の富裕層はどのような人かを調べたのが、書籍「となりの億万長者」と続編の『お金が“いやでも貯まる”5つの「生活」習慣』です。

「となりの億万長者」と『お金が“いやでも貯まる”5つの「生活」習慣』

この2冊では、富裕層は意外なほど質素な生活を送っており、裕福に見える人のほうが資産が少ないという驚くべき実態が明かされています。

「となりの億万長者」は日本語版の副題が「成功を生む7つの法則」となっており、文中でこれらの法則が取り上げられていきます。次のようなものです。

  1. 彼らは、収入よりはるかに低い収入で生活する。
  2. 彼らは、資産形成のために、時間、エネルギー、金を効率よく配分している。
  3. 彼らは、お金の心配をしないですむことのほうが、世間体を取り繕うよりもずっと大切だと考える。
  4. 彼らは、社会人となった後、親からの経済的な援助を受けていない。
  5. 彼らの子供たちは、経済的に自立している。
  6. 彼らは、ビジネス・チャンスをつかむのが上手だ。
  7. 彼らは、ぴったりの職業を選んでいる。

調査方法

この本で取り上げられた「億万長者」の定義は、アメリカ合衆国で純資産100万ドル以上を持つ世帯となっています(「となりの億万長者」30ページ)。

純資産とは資産から負債の額を引いたものです。たとえば預貯金と不動産が100万ドルあっても、借金も100万ドルあれば純資産はゼロになりますから、「億万長者」には該当しません。

アメリカで100万ドル以上の純資産を持つのは、1996年の時点で全世帯の3.5%です。為替レートによりますが、1ドル100円ならば約1億円ですね。

著者が調査を行ったのは1996年までの約20年間で、500人以上の資産家にインタビューし、11,000人以上がアンケートに回答しました(22ページ)。

1995年~1996年には3,000世帯にアンケートを送付し、1,115世帯から回答を得ました(22ページ、335ページ)。

億万長者のプロフィール

職業

医師は高所得の職業ですが、多くの医師はこの本で定義される「億万長者」には含まれません(108ページ)。

なぜならば、たとえ「高所得者」でも、100万ドル以上の純資産がなければ「億万長者」には当てはまらないためです。

医師は支出と借金も多いため、「純資産」がほとんど残りません。同様に、たとえ裕福そうに見える人であっても、あまり資産がなければ億万長者とは呼べません。

一方、学歴が高卒・大卒の中小企業経営者は、多くが億万長者に該当します。ただし、どのような業種の会社のオーナーが億万長者であるかは述べられていません。

  • 私たちの調査によれば億万長者は「会社のオーナー」で「大学中退」「大学卒」「大学に進学しなかった」人々が多数派である(110ページ)
  • 驚くかもしれないが、高額所得者(年収一〇万ドル以上)では、学歴と資産レベルは反比例する(110ページ)
  • 二〇年間、あらゆる産業ジャンルにわたって億万長者を研究してきた私たちの結論は、職業うんぬんよりも、その人の性格で蓄財のレベルが決まるということだ(306ページ)

著者は医師の資産が少ない理由を次のように推測しています(110ページ、111ページ)。

  1. 医師は在学期間が長いので、資産形成にとりかかるのが遅くなる。
  2. 医師は世間体を気にして高級品を買う。よってお金が残らない。

中小企業の経営者は、本人の性格にもよりますが、あまり世間体を気にする必要はありません。

塗装業の経営者が、近所の人に「仕事は塗装業です」と言えば、普通の住宅街に住み、普通車に乗っていても、何とも思われません。

派手ではなく、見栄を張る必要がない職業だからこそ、倹約して資産運用を行えるのですね。

また、彼らのほとんどは親から事業を受け継いだのではなく、自らの代に起業しています。

  • 相続資産が、資産の一割以上を占める人は二割に満たない
  • 過半数の億万長者は一ドルたりとも遺産相続を受けていない(36ページ)

つまり、生活水準が平均的か、それ以下の家庭で育ったことになります。

親の遺産をあてにせず真面目に働いたからこそ、ビジネスで成功し、倹約と資産運用によって一代で富を築くことができたと言えるでしょう。

ただし、会社を経営していなくても、億万長者になれるチャンスはあります

建築現場で働いていても、妻の収入を合わせれば年収八万四〇〇〇ドル以上を稼いでいるカップルはけっこういる(105ページ)のですから、職業に関係なく資産を築くことは可能です。

ライフスタイル

「となりの億万長者」のライフスタイルは、普通の人とまったく変わりません。

多くは高級住宅街ではなく、一般的な住宅地に住んでいます。

一○○万ドル以上の投資をしている人で、三十万ドル以下の住宅に住む人は、一○○万ドル以上の住宅に住む人の三倍近くいる(12ページ)

一般的な住宅街に住むと高級品を身に付けて見栄を張る必要がありませんから、お金がどんどん貯まります。

たとえば、億万長者に最も人気の自動車ブランドはフォードで、時計ブランドはセイコーとロレックス、そしてタイメックスだそうです。

フォードはアメリカでは大衆車ですから、日本ならばトヨタに該当するでしょう。また、タイメックス(Timex)はアメリカの大衆的な時計ブランドです。

億万長者が好む車種(「となりの億万長者」162ページ)
順位ブランド名割合
1フォード9.4%
2キャデラック8.8%
3リンカーン7.6%
4ジープ、レクサス、メルセデス・ベンツ各6.4%
5オールズモビル5.9%
6シボレー5.6%
7トヨタ5.1%
8ビュイック4.3%
9日産、ボルボ各2.9%
10クライスラー、ジャガー各2.7%
億万長者が持つ時計(「5つの生活習慣」78ページ)
順位ブランド名割合
1セイコー19.5%
2ロレックス15.4%
3タイメックス10.8%
4オメガ5.7%
5タグホイヤー4.3%
6モバード4.2%
7ブローバ2.1%
8カルティエ1.9%
9ブライトリング1.7%
10パルサー1.2%

高級ブランドの所有率も高いですが、大衆的なブランドも同じくらい好まれています。

ただ、高級ブランドが含まれた表を見る限りでは「富裕層は倹約家だ」とは言い切れませんから、もう少し説得力があるデータを挙げてみましょう。

  • 億万長者の五○%以上は三九九ドル以下のスーツしか買っていない(54ページ)
  • 億万長者の半分は一四〇ドル以上の靴を買ったことがない(58ページ)
  • 億万長者の半分は二三五ドル以上の腕時計を買ったことがない(59ページ)
  • 10人のうち4人近くは、10ドル以下のワインを飲んでいる(『5つの「生活」習慣』117ページ)

だいぶ具体的になってきましたね。富裕層の中には、高級志向の人と同じくらい倹約家もいるという事です。

クレジットカードに関してはもっと明確で、ほとんどの人がVISA・MasterCardの一般カードかゴールドカードを使っています。

ゴールドカードというと豪華に聞こえますが、プラチナカードよりはランクが下ですし、VISAとMasterCardにはAmerican ExpressとDiners Clubほどのステータスはありません。そして、それら高級クレジットカードの所有率は低くなっています。

以下の表には日本では馴染みがないブランドも多いですが、多くはスーパー・デパートのカードです。上位に入っている「シアーズ」も「J・C・ペニー」も、大衆的な小売店となっています。

億万長者のクレジットカード(「となりの億万長者」73ページ)
順位名称所有率
1ビザ59.0%
2マスターカード56.0%
3シアーズ43.0%
4J・C・ペニー30.4%
5アメリカン・エキスプレス(ゴールド)28.6%
6アメリカン・エキスプレス(一般)26.2%
7ロード・アンド・テイラー25.0%
7サックス・フィフス・アベニュー25.0%
9ニーマンマーカス21.0%
10ブルックス・ブラザーズ10.0%
11エディー・バウアー8.1%
12アメリカン・エキスプレス(プラチナ)6.2%
13ダイナースクラブ3.4%
14カルトブランシュ0.9%

ライフスタイルの中で特に印象的なのは、『お金が“いやでも貯まる”5つの「生活」習慣』に登場した、テキサスの億万長者の言葉です(同書131ページ)。

彼は著者のインタビューを受ける際に馴染みのレストランに案内したのですが、そこは、いかにも富裕層が好むような高級レストランではなく、一番高いメニューが9.95ドル、約1,000円のメキシコ料理店でした。

テキサスの億万長者はその店が気に入っているのですが、唯一の不満は「テーブルにバターが常備されていない事」です。

だから彼は、いつもバターを持ってその店に来るのだそうです。

子育て

「となりの億万長者」195ページからは「5 親の経済的援助」という章になっていますが、ここでは億万長者の子育てについて解説されます。

意外なことに、子育てに関しては、彼らは「絵に描いたような億万長者」に変貌します。

自分自身があまり裕福でない幼少期を過ごしたため、子供には同じ思いをさせたくないと考えるためです。

多額の寄付が必要な私立学校に進学させることも珍しくありません。成人してからも、積極的に金銭を援助します。

「職業」の項でお伝えしましたが、億万長者のほとんどは、親に頼らずに財産を築いた人々です。それなのに、億万長者自身は子供を「親に頼る人間」に育て、「億万長者」にふさわしい贅沢をさせてしまいます。

そんな子供達は倹約も資産運用もせず、親の遺産を食いつぶす浪費家になってしまうでしょう。この点だけは見習わないほうが良いですね。

億万長者の資産運用術

このように、億万長者は多い収入に対して少ない支出で生活するため、お金が貯まりやすくなっています。

富裕層なのに倹約し、地味な生活を送るというのは妙ですが、豪華な生活を送ればお金を使わなければならず、資産運用ができなくなります。

たとえば、年収1,000万円のAさんとBさんがいるとします(話をわかりやすくするため、舞台を日本にします)。

倹約家のAさんは大して高級ではない地区に住み、中古車を買って10年近く乗り続け、安い店で必要最小限の買い物しかしません。

一方のBさんは、セレブ感満載の高級住宅街で高級輸入車を乗り回し、高級スーパーとデパートで日常的に買い物しています。

外見だけなら、Aさんは貧しく、Bさんは富裕層に見えるでしょう。ですが、Aさんの手元には毎年500万円が残るのに対して、Bさんの手元には1円も残りません。

10年経てば、貧しそうなAさんの資産は5,000万円になりますが、裕福に見えるBさんは1円も資産を築くことができませんね。実際には倹約だけではなく資産運用も行いますから、2人の資産の差はさらに開きます。

著者は、Aさんのような人を「蓄財優等生」と呼び、Bさんを「蓄財劣等生」と呼んでいます。

また、『お金が“いやでも貯まる”5つの「生活」習慣』では、蓄財劣等生は「上昇志向の人」とも呼ばれています(18ページ)。

上昇志向と言うと聞こえが良いですが、実は「高級品さえ身に付ければ富裕層になれる」と勘違いする人なんですね。

しかし高級品ばかり買っていては倹約も資産運用も行えませんから、億万長者への道からはかえって遠ざかってしまいます。

日頃からお金の管理を徹底する

ただし、蓄財優等生Aさんも、何もせずに毎年500万円を貯められるわけではありません。お金を計画的に使っているのです。

調査によると、億万長者の3分の2は、食費・衣料費・住居費を把握しています(69ページ)。

買い物をしたら必ずレシートを受け取り、できるだけ正確に家計簿をつける家庭であると言えますね。

また、稼いだ分だけお金を使ってしまうのではなく、「今月の収入は50万円だから、半分の25万円は必ず貯蓄しよう」と、あらかじめ貯蓄する額を決めておくことも大切です(67ページ)。

焦って資産を築く必要はない

蓄財優等生と蓄財劣等生には10年間でかなりの差が生じることがわかりますが、「時間の経過」も億万長者になるための重要な要素です。

なぜならば、億万長者のほとんどは、平均で45歳になるまで100万ドルの資産を築くことができなかったためです(『5つの「生活」習慣』33ページ)。

若い頃に贅沢しなかったからこそ、億万長者になれたのですね。言い換えれば、45歳になる前に100万ドル(約1億円)の資産を築こうと焦る必要はありません。

ところで、著者は「期待資産額」という指標を示し、「この年齢でこの年収なら、これ以上の資産があれば蓄財優等生だよ」という趣旨の事を述べています。

期待資産額は「年齢×税引き前の年間世帯所得÷10」で表します(「となりの億万長者」31ページ)。

たとえば、30歳で世帯年収500万円の人の場合は「30×500÷10(万円)」ですから、純資産が1,500万円以上なら「蓄財優等生」ということになります。

さすがに年収500万円で「億万長者」になるのは難しいですが、30歳で1,500万円も資産があれば、同年代で収入が同じくらいの人よりはお金持ちと言えますね。

長期投資を基本とする

ただし、たとえ高所得の蓄財優等生でも、純資産100万ドル・1億円以上を達成するためには、時間をかけてお金を稼がなければなりません。株式などに投資することも重要です。

たとえば、蓄財劣等生が資産運用のための情報収集に月4.6時間しか使わないのに対し、蓄財優等生は毎月8.4時間も費やします(138ページ)。

蓄財優等生は証券マンに頼らず自分自身で投資の判断をし(144ページ)、約30%の人が6年以上、25%の人が2年から4年は同じ銘柄を保有し続けます(142ページ)。

さらに、2009年に出版された『お金が“いやでも貯まる”5つの「生活」習慣』7ページによると、億万長者のほとんどは投資額が資産の30%以下だったため、2007年・2008年の金融危機でもダメージを受けなかったそうです。

普段から倹約を心がけ、安全な資産運用先を探すからこそ、さらに資産が増えるというわけですね。

「となりの億万長者」は幸せなのか?

億万長者=資産が多い人は、「支出が少ない高所得者」であることがわかりました。

ただ、「高所得者・富裕層なのに、贅沢せず倹約してばかりの人生なんてつまらないのではないか?」という疑問が浮かびますね。

著者も多くの読者に同じ事を指摘されていますが、次のように反論しています。

  • 裕福であることの利点は、高級ブランド品を持つことよりも、むしろ経済的自立や安心感のほうにあるのだ(『お金が“いやでも貯まる”5つの「生活」習慣』183ページ)
  • 幸せな人々は、自らの財力をはるかに下回る生活を送る傾向がある(同)

私は著者に同感ですが、この言葉が正しいかどうかは人によるのではないでしょうか?

高級品を身に付けなければ恥ずかしくて仕方がないという人なら、倹約するだけでストレスが溜まりますね。ならば、いくら貯蓄しても幸せになれるはずがありません。

しかし、将来も安心できるだけの資産を築きたい人ならば、「セレブ」の真似をして派手な生活を送ることなく、資産運用と倹約に励むことで富裕層になれるでしょう。

つまり、贅沢な暮らしと金銭的な安心の二者択一ですね。

後者を選びたい方は、この2冊を読んで質素な生活を送るための知恵を学ぶことで、「となりの億万長者」になれるかもしれませんよ。

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