クリープショー(Creepshow)とはどんなドラマ?
動画配信サイト・Hulu日本版で独占配信されていた(現在は配信されていない場合あり)海外ドラマ「クリープショー」(Creepshow)2019年版の感想レビューです。
私は「安っぽいB級ホラーだな」と思いましたが、アメリカのレビューサイトでは意外と高評価でシーズン2以降も制作されていました。
今回紹介するクリープショー(Creepshow)は2019年9月にアメリカで放送開始されたホラー・テレビドラマですが、元々は1982年にホラー作家のスティーブン・キングが脚本を書き、「ゾンビ」でおなじみのジョージ・A・ロメロが監督を務めたオムニバスホラー映画でした。その後、1987年と2006年にも映画が製作されています。
英単語 creep は本来「忍び寄る」「腹這う」といった意味の動詞ですが、「気味が悪い」という意味の俗語としても使われます(コーヒーに入れるミルクとは関係ありません。綴りも違います)。
今回取り上げる2019年版ドラマは1回あたり約45分で、1回に2話が収録されたオムニバスです。シーズン1は6回あるので、全12エピソードとなります。
監督や脚本などのスタッフは毎回異なりますが、「ウォーキング・デッド」で有名なグレッグ・ニコテロ監督も参加しています。
エピソードを一部紹介(S1 E1, E6)
各エピソードは、「ローブ(魔法使いのような外套)を着た、ゾンビと骸骨の中間のような男(女?)が現れ、Creepshow Magazineに掲載された漫画を視聴者に見せる」という体裁で始まります。
内容ですが……いかにも「これ怖いでしょ?」と言わんばかりのB級ホラーです。わかりやすい視覚的な恐怖を多用していると感じました。
たとえば第1回前半パートの「灰色のかたまり」(Gray Matter)は、ある少年の父親が突然酒浸りになり、正体不明のモンスターに変化して町の人々を襲うようになる……というストーリーです。
約20分の短いオムニバスドラマであるためか、特に伏線はなく、父親が怪物になった理由も説明されません。そして世界中に怪物があふれ、人々がパニックに陥る……といった結末です。
その後も狼男やゾンビなど、アメリカのホラーに良く出てくるモンスターや幽霊が登場し、特にひねりもないわかりやすいストーリーが展開されます。
そして人間が叫んだり殺されたりという、視聴覚的に非常にわかりやすいホラーが描かれます(「人間が」まったく死なず不幸にもならないのは、第1回後半の「首の家」(The House of the Head)のみ)。
ただし第6回のみ、前半・後半ともモンスターや超常現象ではなく「実在していてもおかしくない架空の生物」による恐怖がテーマです。
第6回の前半パート「スキンクローラーズ」(Skincrawlers)は、「南米アマゾンでウナギとヒルが混ざったような新種の生物が発見され、その生物に脂肪を吸引させるダイエット法が開発される」という内容でした。
ところが、その生物が実は人間の体内で繁殖しており、テレビの生放送中に突然狂暴化して人間の体を内側から食い破るというストーリーです。
その様子がグロテスクで……眼球を食い破って頭を破裂させたりと、スタジオのあたり一面が血まみれになります。
怖いといえば怖いですが……やはり「得体の知れない恐怖」というより、「視覚的にわかりやすい怖さ」が優先されていると感じました。
個人的な感想を付け加えると、怖さやグロテスクさよりも、「新しいダイエット法が開発されて喜んでいた人々が、突然次々に死んでパニックに陥る」という展開が、「天国から地獄に突き落とされる感じ」で悲しいな……と思いました。
本国アメリカでは意外と高評価?
「いかにもアメリカらしいコテコテのB級ホラー」であるクリープショー(creepshow)、私の感想は「つまらなくはないけれど、何度も見るほどではない」です。5つ星評価だと星3つ ★★★☆☆ でしょうか。
「こんな内容だと、どうせアメリカでも人気出なかったんだろうな」と予想していましたが……実はアメリカでは意外と人気があるドラマであるようです。
たとえば、英語圏の映画・テレビドラマのレビューサイト「IMDb」に掲載されたクリープショー(Creepshow)の評価です。
Creepshow (TV Series 2019– ) – IMDb
なんと、約5,800人にレーティングされ、平均は10点満点中7.1点という高めの評価です(2021年10月8日時点)。
もちろんIMDbではレーティング平均が8や9以上という「文句なしに名作」なドラマもあるのですが、ひどいものだと5点未満になるので、クリープショー(Creepshow)の評価は決して低くありません。
好評につきシーズン2・3も制作される!
テレビドラマ・クリープショー(Creepshow)が初めて放送されたのは2019年9月から10月で、総エピソード数は6(各回が前後編に分かれているので、合計12話)でした。
しかし予想以上に人気が出たためか、2020年に2本のスペシャル版が放送され、レギュラー放送のシーズン2・3も制作されました。
私がこの記事を書いている2021年10月11日時点では、ちょうどアメリカでシーズン3が放送されているところです。
時代劇や新喜劇のように「観る側もルールをわかっている」
安っぽくてストーリーもわかりやすいCreepshow(褒め言葉)が高評価なのは、「観る側も怖がり方をわかっている」からなのかな、と感じました。
たとえば、画面にゾンビが出てきたり血が飛び散ったりするシーンは「どうだ怖いだろう!」という制作者側からのメッセージですが、視聴者の側も「うん、怖い!」と応えているのだと思います。「B級ホラーはこうやって怖がるものだ」というルール(コード code 規則)を両者が共有しているのです。
日本の時代劇は「殿様が悪役を退治する」というワンパターンなストーリーばかりですし、大阪の「新喜劇」も冷静に考えるとそれほど面白いものではありません。伝統芸能やオペラも、知識なしに楽しめるものではありません。それらが成り立つのは、「製作者と観客・視聴者がルールを共有している」からです。
Creepshowは最初から「ありきたりで安っぽいB級ホラー」として作られているので、それを求め、怖がり方も理解しているB級ホラーファンに支持されるのだと感じました。
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