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NHKラジオ「まんまる」は「公共放送らしさ」を活かした良番組

目次

NHKラジオ第1放送の番組「まんまる」概要(タイムテーブル・出演者)

ラジオ番組「まんまる」は、2024年4月1日月曜日にNHK第1放送で開始された新番組です。

放送時間は月曜日~金曜日、午後0時30分~午後3時55分の約3時間25分ですが、国会中継・相撲中継・高校野球中継などがある場合は放送時間が短縮されることがあります。祝日は放送休止です。

また、2024年2月23日金曜日・天皇誕生日には「まんまる 第0回」として、パイロット版番組が放送されました。 NHKラジオ番組「まんまる」のタイムテーブルと出演者一覧は以下の通りです。情報は公式サイトを参考にしています。

エピソード - まんまる – NHK

NHKラジオ番組「まんまる」タイムテーブル

時間帯コーナー名内容
午後0時台0時30分~55分「そのまちのお昼」日本全国各地のコミュニティFMパーソナリティーやローカルタレントが出演し、地域の魅力を伝える。
0時55分全国の気象情報、交通情報「まんまる」アナウンサー、気象予報士、道路交通センターがリレー
午後1時台1時0分全国のニュース-
1時5分「ひとのわ」俳優やジャーナリストなどのゲストが出演しトーク。出演者の故郷について語ることが多い。
1時55分ニュース、気象情報、交通情報ローカル
午後2時台2時0分全国のニュース-
2時5分~55分「まちのわ」前半は「まちのはなし」で全国各地で活躍する人を紹介。後半はNHK各局のローカルニュースを伝える「列島リレーニュース」。
2時55分ニュース、気象情報、交通情報ローカル
3時台3時0分全国のニュース-
3時5分~55分「こえのわ」リスナーからの音楽リクエスト・お便りを紹介。3時50分頃に午後4時台の番組「関西ラジオワイド」のパーソナリティーが出演する場合あり(クロスプログラム)。木曜日は高山哲哉アナウンサーによる高速道路サービスエリアからの中継あり。金曜日は月に1回程度『BSシネマ』の坂本朋彦プロデューサーが出演し映画と音楽について語る。

各コーナーの内容

NHKラジオ第1放送の番組「まんまる」は、「全国各地のコミュニティFM・こども食堂とスタジオをつないで話す」「ゲストを招いてアナウンサー・パートナー(パーソナリティ-)とトークする」内容が中心です。

後述するようにNHKラジオなので「論争を呼ぶ内容」は放送できず、無難なゲストと無難な話をする内容に徹しています。

1時台「ひとのわ」のゲストは、4月2日火曜日が俳優・篠井英介、4月8日月曜日はTRFのSAMなど豪華です。「世界中のマラソンを走っている人」「豆腐ソムリエ」など個性的なゲストも登場します。

0時台「そのまちのお昼」2時台「まちのわ」では、日本各地のローカルタレントやコミュニティFM局のパーソナリティー、こども食堂の運営者とその地域の魅力や課題について話します。

時間帯によりコーナー名が違うものの、ゲストが住む地域・故郷の話を聞くことが多くなっています。

そのおかげで「地域の人とつながり、毎日を“まんまる”な気持ちで」というコンセプト(NHK「2024年度(令和6年度) 国内放送番組編成計画」PDFより)が活かされており、「今この瞬間、日本各地で何が起きているか」を感じられる、公共放送NHKらしい番組構成になっています。

4月の木曜日3時台は高山哲哉アナウンサーが関東地方の高速道路サービスエリアから中継してリスナーを探す企画を行っており、4月4日は1人しか会えなかったものの、4月11日は7人、4月18日は27人、4月25日も11人となかなかの好成績です。

NHKラジオ番組「まんまる」出演者一覧

NHKラジオ第1放送の新番組「まんまる」ですが、パートナー(パーソナリティー)は各曜日3人(金曜日4人)、合計16人という多さです。

しかも、元モーニング娘。の保田圭や歌手の平原綾香などやたらと豪華です。

-月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日
アナウンサー高山哲哉松尾剛
パートナー
(各曜日1人ずつ出演)
ドリアン・ロロブリジーダ
鈴木明子
水野裕子
夢眠ねむ
吉澤智子
小宮山雄飛
金子鈴幸
大菅小百合
浜島直子
伊藤かずえ
にしおかすみこ
保田圭
小田井涼平
きじまりゅうた
平原綾香
蝶花楼桃花

前身NHKラジオ番組「ごごカフェ」との違い

NHKラジオ第1放送では2024年3月29日金曜日まで、「まんまる」と同時間帯に「ごごカフェ」を放送していました。

「ごごカフェ」から「まんまる」への主な変更点は以下の通りです。

「ごごカフェ」など以前のNHKラジオ第1放送・平日ワイド番組では毎時30分頃にニュースを放送していましたが、「まんまる」では廃止されました。

平日午前の番組「ふんわり」では2024年4月1日以降も毎時30分頃のニュースは継続していますので、「まんまる」特有の措置のようです。

また、午後3時0分からのニュースは「ごごカフェ」までは10分間で、後半に気象予報士による解説がありましたが、「まんまる」ではアナウンサーが5分間ニュースを読むだけになりました(株価・為替は継続)。

「ごごカフェ」では午後1時台最初に「おしえて解説委員!」という、総合テレビ午前11時頃の番組「みみより!解説」とほぼ同一内容の解説委員による政治や生活情報のコーナーがありましたが、「まんまる」では廃止されました。ただし、解説委員が出演することはあります。

「列島リレーニュース」は札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・松山・福岡の各放送局からローカルニュースを全国放送するコーナーです。「まんまる」でも継続されていますが、ニュース項目が「ごごカフェ」時代の各局2項目から1項目に削減されました。

また、必ずではないものの、3時50分頃に次の番組「関西ラジオワイド」の大阪スタジオとつないで両番組の出演者同士で会話するようになりました(午前の番組「ふんわり」終了間際に「まんまる」出演者が番組について話すこともありましたが、4月のみで終了するようです)。

民放とNHKのラジオ番組の違い

NHK第1放送の新番組「まんまる」の特徴について「民放ラジオとの違い」に焦点を当てて考えます。

「政治」「内輪ネタ」は民放ラジオのキラーコンテンツ

まず、ラジオ番組はテレビ番組と違い映像がなく、音声と音楽を流すしかないので、「どんな内容の番組・コーナーにするか(何を言うか)」「どんな曲をかけるか(曲のターゲットとなる年代・性別は何か)」が重要になります。

音楽についての詳細は省きますが、会話中心のAMラジオ(FM移行局含む)では、以下のような内容を盛り込めば差別化可能です。

NHKラジオにも「関西ラジオワイド」のような地域密着型の番組や「らじらー!」のように芸人・アイドルが出演する番組はありますが、「まんまる」は高齢リスナー中心の平日日中の番組で全国放送のため、いずれも該当しません。

また、民放なら「飯田浩司のOK! Cozy up!」(ニッポン放送)や「こんちわコンちゃんお昼ですょ!」(MBSラジオ)のように、パーソナリティーとリスナーが政治的な話題について長時間語る人気番組もありますが、NHKは公共放送なので「日曜討論」など政治自体がテーマの番組を除けば政治的な話をできません。

せいぜいアナウンサーが「この問題は国民の政治不信を招きますね」と一言コメントしたり、解説委員が政治について解説したりするくらいです。

また、民放ラジオはテレビより自主規制が緩いためか、「福山雅治のオールナイトニッポンサタデースペシャル・魂のラジオ」(ニッポン放送、2015年3月終了)のような深夜番組で際どい下ネタを連発することもあります。

近年は深夜ラジオでも下ネタは控えめになっていますが(「昔と比べれば」ということです)、そこまでいかなくても芸人が私生活について赤裸々に語る「内輪ネタ」は民放ラジオの人気コンテンツです。

一方、NHKラジオのリスナーは「ラジオ深夜便」のような落ち着いた雰囲気を望んでいるため、性教育や健康情報を除けば性的な話題は控えられますし、出演者が断片的に私生活について語ることはあっても、話題のメインとなるのはゲストやリスナーからのお便りです。

よって、NHKラジオでは「政治的発言」「内輪ネタ」というラジオのキラーコンテンツを番組に盛り込めないのです。

「ながら聞きできる無難な内容」で差別化できるNHKラジオ

しかし、そもそもNHKラジオのリスナーは「内輪ネタ」を望んでいませんし、「政治的発言」についても同様でしょう(国会中継や日曜討論は別ですが、平日昼間のトーク番組ではあまり政治の話は聞きたくないのではないでしょうか?)。

また、NHKラジオは「ニュースと時報を聞くために『ながら聞き』する」ことが多いため、ゲストを呼んで地域情報や専門的な話をするだけの無難な内容にしたのはかえって良かったといえます。

「民放のワイド番組が政治的な話ばかりしているからこそ、政治に触れないNHKラジオの『まんまる』が差別化できている」のではないでしょうか。

「個性的なパーソナリティー」は個性的な番組を牽引する

NHKラジオ第1放送で過去の同時間帯に放送されていた「午後のまりやーじゅ」「ごごラジ!」「ごごカフェ」は、山田まりや、神門光太朗アナウンサー、武内陶子アナウンサーなど「個性的なパーソナリティー」が中心となる番組でした。

「ごごカフェ」という番組名のように、メインパーソナリティーが店長に、リスナーが客になるイメージです。

このような「店長と客の関係」のラジオ番組では、常連客が生まれる一方で、「一見さん」は参加しにくくなります。

また、「個性的なパーソナリティー」は「政治的発言」「内輪ネタ」との親和性が高く、2時間も3時間もメインパーソナリティーが中心になってリスナーのお便りを交えつつ政治の話をしたり、居酒屋のような下ネタを話したりできます。

しかし「政治」「内輪ネタ」が控えられパーソナリティーの個性で番組を牽引できないNHKラジオでは、メインパーソナリティー中心の番組作りをすると空回りするおそれがあります。

一方で「まんまる」はアナウンサー2人、パートナー(パーソナリティー)16人のうち毎日2人が出演する形式のため、パーソナリティーの個性に番組が牽引されることがありません。「まんまる」という名前の通り、「広場に大勢の人が集まるイメージ」です。 繰り返しますが、NHKラジオの「まんまる」は「個性的なメインパーソナリティと常連リスナーばかりでなく、幅広いリスナーに『ながら聞き』できる優しい話題を提供する」という役割を果たせています。

NHKラジオ番組「まんまる」の感想は「安心して毎日聞ける公共放送らしい番組」

最初に述べたように、NHKラジオ第1放送の番組「まんまる」は、本放送開始前の2024年2月23日金曜日・天皇誕生日にパイロット版の「第0回」が放送されました。

第0回は高山哲哉アナウンサー、小田井涼平(元・純烈)、きじまりゅうた(料理家)の3人が出演し、本放送と同様にゲストとトークしたり、コミュニティFMに電話して地域情報を聞いたりする内容でした。

私は第0回を聞いたとき、はっきり言って「やたらと出演者が多いだけで、何をしたいのかよくわからないパッとしない番組だな」と思いました。

しかし、4月1日月曜日の本放送第1回を聞いて印象が変わりました。

まず、アナウンサーとパートナー(パーソナリティー)の2人、ゲストを加えても3人に同時出演者を絞ったことで話がわかりやすくなり、スッキリした印象になりました。

また、テーマ曲が1980・1990年代にNHK教育テレビで放送されていたアメリカのドラマ「フルハウス」のテーマ曲のような明るいメロディになり、「テーマ曲が楽しそうだからなんとなく聞きたい」と思えます。

そして、ここまで私が述べたようにNHKラジオでは「政治」「内輪ネタ」が控えられるので無難な会話を流すしかありませんが、日本各地のローカルタレントやコミュニティFMのパーソナリティーを積極的に出演させる方針は非常に良いと思います。

「日本全国で今、何が起きているかというライブ感が生放送で伝わる」こともありますし、「地域振興に資する」公共放送・NHKの役割を果たせています。

ただひたすら地域の話やゲストの仕事についての話をするだけなので民放ラジオ番組のように内容がネットニュースになることはありませんが、「安心して毎日『ながら聞き』できる、公共放送・NHKらしい優しい番組」です。

付け加えると、3時50分頃に行われる4時台の番組「関西ラジオワイド」の鹿島綾乃アナウンサー・大山武人アナウンサーとのリレーは、2024年3月までは「午後4時5分に急に東京から大阪に飛ばされた感覚」だった関西ラジオワイドが、東京の「まんまる」とつなぐことで全国放送として認識できる効果があります(ローカル局制作・全国放送の「ミヤネ屋」「ゴゴスマ」の中で東京のスタジオからニュースを放送するような感じ)。

当サイトにもレビュー記事を掲載したNHK総合テレビの新番組「午後LIVE ニュースーン」が期待外れだったため、余計にラジオ第1放送の「まんまる」が良い番組に感じます。

NHKラジオ第1放送の平日午後の番組は定期的にリニューアルされますし、2026年度にはNHKラジオがAM・FMの1波ずつに再編される予定ですから、今後「まんまる」がいつまで続くかはわかりません。

しかし、日本全国をつないで、午後の穏やかな時間を友達と一緒に過ごしているような「まんまる」は、できるだけ長く続いてほしい番組です。

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