お知らせ
このページは2016年1月16日に掲載し、2016年12月6日に更新した内容を再編集したものです。
画面7インチ未満のスマートフォンは産経新聞の紙面を無料で読めた
Android/iPhoneの産経新聞アプリ(紙面ビューアー)は、2016年12月6日まで紙の産経新聞と同じレイアウトの電子版を、会員登録不要で、毎日無料で閲覧可能でした。
残念ながら2016年12月6日、産経新聞アプリによる紙面ビューアーの無料閲覧は終了しました。ただ、便利なサービスでしたので、当時アプリを利用した記録を掲載します。
紙の新聞には上の写真のようにかさばりますし、新聞回収袋に入れて廃品回収に出す手間もかかります。購読料も4,000円以上かかり、年換算で50,000円以上の大金です。
産経新聞アプリの無料電子版を使えば年間50,000円も得になりましたし、スマートフォンの画面に紙面を表示すれば、溜まった新聞紙を捨てる手間も省けました。
全ての記事が一覧表示される通常のニュース用アプリやサイトと違って、紙面ビューアーなら紙の新聞と同じく、重要なニュースほど大きな見出しで表示されるため、情報の取捨選択に優れていました。
読売新聞や朝日新聞のニュースサイトなどと違って全ての面を無料で読めたことも、産経新聞アプリの紙面ビューアーのメリットです。
産経新聞アプリ無料紙面ビューアーの使用感
以下は、実際に産経新聞アプリで無料の紙面ビューアーを使用した感想です(繰り返しますが、アプリによる産経紙面紙面の無料閲覧サービスは2016年12月6日に終了しています)。
産経新聞アプリ無料閲覧に使ったのは、NTT docomo・韓国LG電子のOptimus Vu: L-06Dです。画面サイズが5インチと大きく(2023年時点では小さいくらいですが、2014年~2016年頃は「ファブレット」と呼ばれるタブレットのような大型スマートフォンに位置付けられていました)、縦横比が4:3で、タブレット同様に使うことができました。
また、産経新聞は、紙面・電子版ともに平成26年(2014年)4月1日・火曜日のものを引用しています。
アプリを起動すると、紙面を選択する場面が表示されます。「フジサンケイビジネスアイ」も電子版を無料で読めますが、今回は産経新聞を選択します。
1面が表示されました。画面のピンチインかダブルタップで拡大、ピンチアウトで縮小できます。まず、1面左下のコラム「産経抄」を読みます。
紙の産経新聞と同じ大きさに拡大しました。
こちらは、同じ日の産経新聞の紙面にスマートフォンを重ねた様子です(紙面は大阪本社版のため、アプリで読める無料電子版の東京本社版とは一部の記事が異なります)。
紙の産経新聞と重ねると無料紙面ビューアーは小さく見えますが、実際のスマートフォンの画面ではそこまで小さく感じませんでした。
「笑っていいとも!」終了で特別版配信
このページで取り上げた産経新聞紙面・無料アプリビューアーは「平成26年(2014年)4月1日」ものです。この日付にこだわるには理由があります。
実は、この日はフジテレビで1982年から32年間放送された、タモリ司会の番組「笑っていいとも!」の最終回が放送された2014年3月31日の翌日です。
このように重大な出来事が起きた日は、「号外」など特別な産経新聞の紙面が配信されることもありました。
なぜ産経新聞は紙面無料アプリを開始し、終了したか
産経新聞アプリで紙面ビューアーを無料提供した理由について、担当者は2008年12月19日にITmediaの取材に対して以下のように答えていました。
これまでの電子新聞サービスは有料だったが、アプリは当面無料とした。「小出しにせず、どーんと出して使ってもらおうと思い切った」
iPhoneユーザーは「情報感度は高いが、新聞を読んでいない層」と見る。「NetViewを知ってもらって、いろんな意見や感想をもらいたい。今回のアプリはテストマーケティング。『とにかく見てくれ』という思いだ」
だが、ユーザーからの反響はそれほど期待しておらず「静かに流されてしまうだろう」と思っていた。「15年間で自信をなくしていたから」
今は予想以上の反響に驚いている。無料であることを評価するユーザーが多いという。「新聞のレイアウトはやっぱり読みやすい」「普段は新聞を読まないが、意外といい」――こんな声もあった。
アプリの無料配信は「新聞の無料試読制度のようなもの」と位置付けており、いつまで無料で提供するかは未定だ。「なんとか軌道に乗せるため、ビジネスモデルを検討中」で、有料化や新たな広告モデルを探っていく。アプリを使って「来年春までいろんな実験をしたい」という。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0812/19/news042.html
この記事によると、産経新聞iPhoneアプリでの無料紙面ビューアーがサービス開始したのは2008年12月12日です。約8年間も無料サービスを続けられたことを考えれば上出来と言えるでしょうか。
なお、Android版の産経新聞アプリが無料提供を開始したのは2011年11月1日です。
産経新聞とフジサンケイビジネスアイが購読できるAndroidアプリ「産経新聞」 - ITmedia Mobile
先程引用したインタビューをよく読むとわかりますが、産経新聞アプリは永続的な紙面ビューアーの無料提供を予定していたわけではなく、「当面無料」「無料試読制度」と位置付けられていたのです。
ただ、なぜ産経新聞アプリ無料紙面ビューアーの提供終了が2016年12月6日という時期だったのか、明確な理由は示されていません。
産経新聞アプリ無料紙面ビューアー終了後の動向
素人考えですが、産経新聞は無料アプリを終了せず、「広告を閲覧したら無料で紙面ビューアーを読める仕組み」を導入すべきだったと思います。
前述のように産経新聞はアプリ無料提供を「試読紙」同様に位置付けていましたが、無料アプリで産経新聞紙面を読んでいたユーザーが紙の新聞を購読したわけではないことは明らかです。
こちらの2010年11月9日付東洋経済オンラインの記事によると、産経新聞の部数は2008年に220万部だったが、2010年10月時点では160万部まで減少していたとのことです。
産経が読売に宣戦布告か、新聞大会で対立が表面化 | 企業戦略 | 東洋経済オンライン
さらに、2022年10月には、産経新聞の朝刊販売部数が100万部を割り込みました。
産経新聞が100万部割れ/実売80万部程度/12道県で1千部割れ/東京・大阪中心の「ブロック紙」に:FACTA ONLINE
読売新聞や朝日新聞などの他紙も、さらに言えば日本のみならず世界中の新聞が部数を減らしていますから、産経新聞だけが悪いわけではありません。
しかし、紙の新聞が発行部数を減らし続けている以上、「ネットで無料試読を提供し、紙の新聞の購読につなげる」という考え方自体が間違っているのですから、ネットサービスの収益化を目指すべきだったといえます。
「紙の新聞」は消えつつあるが、「新聞社の記事」にはニーズがある
紙の新聞はなくなりつつあるものの、「新聞社」「新聞社の記事」自体にはニーズがあります。Yahoo! NewsもGoogle Newsも、配信されるのは大手マスコミの記事ばかりです。
もちろん記者も人間である以上、テレビ局や新聞社の記事であろうと誤りはあります。ですが、SNSやYouTuberや、(当ブログのような)どこの誰が書いたか分からないインターネットサイトよりは信頼性が高いのではないでしょうか。
時に批判されることがあろうと、政治家や大企業内部を取材したり、事件現場に駆け付けたりといったことは、大手マスメディア以外が行うのは困難です。
先進的な取り組みだった産経新聞アプリの無料紙面ビューアーは終了しましたが、マスメディアはネットサービスに軸足を移し、生き残りを図るとともにユーザーニーズに応えてほしいと思います。